2023年6月4日 主日礼拝説教

《 あなたは、王なのか 

ヨハネによる福音書 18:33〜38

そこで、ピラトはもう一度官邸に入り、イエスを呼び出して、「お前がユダヤ人の王なのか」と言った。…イエスはお答えになった。「わたしが王だとは、あなたがたが言っていることです。わたしは真理について証しをするために生まれ、そのためにこの世に来た。真理に属する人は皆、わたしの声を聞く。」ピラトは言った。「真理とは何か」(ヨハネ 18:33~38)

イエスさまは、ユダヤ人たちが入らなかった(28節)総督官邸の中で呼び出されます。ユダヤ人たちは官邸の外におり、イエスさまとピラトは官邸の中にいます。ピラトはイエスさまに「お前がユダヤ人の王なのか」と尋ねます。この問いは、信仰へと導かれる可能性がある問いです。

ですから、この問いに対して、イエスさまは、「あなたは自分の考えで、そう言うのですか。それとも、ほかの者がわたしについて、あなたにそう言ったのですか。」と尋ねます。「イエスさまが、どのようなお方か」は、すべての人にとって、もちろんピラトにとっても、重要なことであり、命をもたらすものです。

ピラトは、自分の考えで、尋ねたのではありませんでした。むしろ、大祭司やユダヤ人たちがピラトに引き渡したがゆえに、イエスさまと関わりを持たなくてはならなくなって、王権について尋ねたのでした。

ピラトは、せっかくイエスさまと語らうことが許されているのに、あくまでも自分は、ユダヤ人たちとイエスの間に立つ裁判官でしかないことを明らかにしました。

イエスさまは、それでも語ることをやめません。ピラトに向かって、ご自分がどのような王であるかを告げます。「わたしの国は、この世には属していない。もし、わたしの国がこの世に属していれば、わたしがユダヤ人に引き渡されないように、部下が戦ったことだろう。しかし、実際、わたしの国はこの世には、属していない。」

イエスさまがお生まれになった時、ヘロデ王は、自らの支配と対立し、自らの国を脅かす力が現れたと思い、恐ろしいことをしました(マタイ2:16)。しかし、イエスさまが新しい王であるということは、人間の助けや地上の力の上に立てるようなものではないので、ヘロデはあんなに恐ろしいことをする必要はなかったのです。イエスさまは、この世の力によって王となり、支配されるのではなく、真理によって治められます。ピラトは、イエスさまが王であるという証しを聞きました。王であるお方は、良い羊飼いとして、真理の霊をもって、導かれます(10.27、14:16,17)。

神のことを知らない異邦人であったピラトに、知らない神を思い起こさせるのではなく、真理を思い起こさせました。主イエスは、真理を明らかにするため、世に来られた救い主です。真理によって生きるものを、主は、ご自分のものと呼んでくださいます。

《祈り》

王の王、主イエス・キリストの父なる神さま。十字架の主が、天に挙げられ、今も、世界を統べ治め、主の霊を注ぎ力を与え、守っていてくださいます。あなたは、確かに約束された弁護者を与えてくださいました。今、そのお方によって、イエス・キリストを思い起こすことができること感謝いたします。どうか、イエス・キリストをわたしたちのまことの王として、自らのうちに迎え、御国の広がりのために仕える者とならせてください。主の御名によって祈ります。アーメン。

(2023/6/4 三位一体主日 橋本いずみ)